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大切な手作りのテーブルクロス

2012年09月14日 院長

Dscf3389 今日は、入院中の皆さんがお食事をしていただく三階のディナーホールのテーブルに敷いてある、刺繍の入った大きなテーブルクロスのお話です。
当院で出産していただいた方は見たことがあると思いますが、皆さん覚えておられますでしょうか。
あのテーブルクロスは今からもう10年以上も前、私がまだ小倉記念病院に勤務していた時に、自分が主治医をしていたある患者さんから開院のお祝いに頂いたものです。
その患者さん(仮にAさんとしましょう)は、進行卵巣がんの状態でした。
もう長く抗がん剤の治療をしていて入退院を繰り返し、だんだん治療も効かなくなっているきびしい状況でした。
御本人と御家族の御意向により、Aさんには病状はすべて真実をお話しておりました。

Dscf3374 しかし、主治医の自分がもうじき退職して自分のクリニックを始めようとしている事はなかなか言い出せませんでした。
ある日の夕方、いつものようにAさんに現在の病状を説明した後、自分も意を決してそのことをお話しました。
それまでいつものように冷静にかみしめるように説明を聞いておられたAさんが、突然大粒の涙を流されたのを覚えています。
その日から間もなくしてAさんから手渡されたのがあのテーブルクロスでした。
「私はあの夜一晩泣きました。でも今は先生の新しい旅立ちを心から応援しています。先生はその笑顔を忘れずに頑張って下さい。」と。
Aさんは私のために貴重な外泊の時間を費やして、あのテーブルクロスを縫っておられたのでした。
今度は私の涙がとまりませんでした。
それから数カ月後、Aさんは永眠されました。

10年がすぎますが、私は今でもあのテーブルクロスの前を通ると、Aさんから「笑顔を忘れずに頑張って下さい。」と言っていただいているような気がしております。
私にとって世界にひとつしかない大切なテーブルクロスなのです。

実はこの話には続きがあります。
Aさんには息子さんが二人おられ、その当時長男さんは医学部の学生さんでした。
ラグビーをしておられるとかで体格も立派で、まさに気はやさしくて力持ちと言った感じの好青年でした。
その後、医師になられたまでは聞いておりました。

今年のゴールデンウイークの頃のある日、突然その方がうちのクリニックに訪ねて来られました。
「いつか北九州の病院に勤務するようになったら、道岡先生のクリニックに母のお礼に参りたいと思っておりました。この春から八幡西区の病院に勤務になり、やっとお伺いすることができました。」と。
私はびっくりして気のきいた挨拶もできず、ただただ恐縮するばかりでした。

10年ぶりにお会いしたAさんの息子さんは立派な体格に加え医師としての風格も漂っており、さぞかし御活躍のことと思いました。
きっと天国のAさんも頼もしく思っておられることでしょう。
診療科がちがうとお会いする機会も少ないですが、もし今度お会いしたら、「お互いこれからも笑顔を忘れずに頑張っていきましょう。」とお伝えしたいと思いました。
                    (院長 道岡亨)


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